最新!疲労・ストレス講座 11

第11話解説

 今回のお話は、疲労回復のメカニズムに関する研究の紹介であるとともに、疲労の仕組み全体のまとめにもなっています。第10話を読んで、いま一つ釈然としなかった人のために、できるだけ分かりやすく書いたつもりです。

 今回のお話の大事なポイントの一つに、疲労は外から見ると複雑に見えるが、司令塔となる分子をつかまえてしまえば、実は単純な仕組みになっているということがあります。司令塔となる分子eIF2αは、8話でも出てきたヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が疲労を感じる仕組みの研究がヒントとなって見つかりました。eIF2αのリン酸化と脱リン酸化が疲労と疲労回復の本体だということは、今回の話でも出てきた2種類の阻害剤を使った実験でわかりました。

 少し詳しい人だと、阻害剤を使った実験では不十分ではないかと感じるかも知れません。通常は、この様な遺伝子機能の解析には、ノックアウトマウスという遺伝子を欠損させた実験動物を使うのが普通です。ところが、疲労に関係する各種の遺伝子のほとんどは、欠損させると、マウスが生まれて来ないか、非常に重篤な疾患を生じてしまい、疲労の実験どころではなくなってしまいます。このことは、疲労が生体にとって非常に根源的な現象で、絶妙なバランス(ホメオスタシス)によって維持されていることを示しているとも考えられます。今回のお話は、この様な事情も加味して読んでいただけると、疲労システムの美しい姿を少しでもお伝えできるのではないかと考えています。

<前の話  全話一覧に戻る  次の話>

ご意見・ご感想・ご質問などはこちらへ