最新!疲労・ストレス講座 5

第5話解説

 第5話は、少々回りくどいお話になってしまったかも知れません。疲労は我々にとってとても身近な現象であるために、疲労の定義に関しても、様々なとらえ方があります。第5話では、全く原因の異なる重要な疲労である、生理的疲労と病的疲労の説明をさせて頂きました。仕事や運動による疲労は、生理的疲労と呼ばれ、健康な人が日常生活で感じる疲労です。通常は、睡眠や休息によって短時間で回復しますが、こじらせてしまうとうつ病や過労死の原因ともなるので、見くびるのは危険です。慈恵医大では、生理的疲労の仕組みや、生理的疲労がうつ病などの疾患を起こすメカニズムを主に研究しています。今回のお話に登場した、生理的疲労をこじらせてしまった状態や、生理的疲労がどの様にうつ病の原因になるかなどは、今後のお話で説明して行きたいと考えています。

 病的疲労は、脳神経に関わる病気でおきる疲労感です。原因、予防法、治療法は、生理的疲労とは大きく異なります。病的疲労を生じる最も頻度の高い疾患は、うつ病です。うつ病は全人口の6.5%が一生のうちに一度は罹る疾患であると言われています。他に良く知られている病的疲労を生じる疾患としては、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)があります。かつては慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれていた病気で、患者数は人口の0.1%程度と考えられています。ME/CFSは脳神経の疾患ですので、研究や診療には専門的な知識が必要です。日本疲労学会のメンバーでは、理化学研究所や関西福祉科学大学の先生方が先端的な研究をされています。

 疲労研究がなかなか進まなかった原因の一つに、生理的疲労と病的疲労をしっかりと区別していなかったことが挙げられます。しかし、理化学研究所や関西福祉科学大学の先生方および海外の研究者によって、ME/CFSが脳神経の疾患であることが明らかにされたことにより、この状況もかなり改善しました。今後は、生理的疲労と病的疲労のそれぞれに対する予防法や治療法の開発が加速すると期待されます。

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