最新!疲労・ストレス講座 8

第8話解説

 8話は、再びヘルペスウイルスのお話です。もともと、私の専門分野は、ヘルペスウイルスの潜伏感染と再活性化のメカニズムの研究です。今回のお話に登場したH6LT (HHV-6 latent transcript)は、2002年に発見したものですが、この当時は、この発見が疲労に結びつくというアイデアは、まだありませんでした。H6LTの様な、2つ以上のタンパク質の情報(open reading frame: ORF)を持ち、「何の仕事もしないタンパク質」が、本来のタンパク質のORFの前にある制御方法を、upstream ORF制御と呼びます。潜伏感染している間も、H6LTの様なセンサーを出していて、御主人様(宿主)の危機を見張っているなんて、HHV-6はなんて賢いのでしょう。

 昔の偉いウイルス学者の言葉に、「最もおろかなウイルスでさえ、最も賢いウイルス学者よりも頭が良い」というものがあります。中でもヘルペスウイルスは、最も高度に洗練されたウイルスの一つであると考えられています。その生存戦略から我々が学ぶべきものは、まだまだ多いはずです。

<前の話  全話一覧に戻る  次の話>

ご意見・ご感想・ご質問などはこちらへ